Promets-Moi -Emir Kusturica-
高校生の時に読んだ「石の花」(坂口尚)から始まった旧ユーゴ熱は、10年以上たった今も褪せることなく続いていますが、地理的にも心理的にも遠い国だし、内戦がいつあるかもわからないから旅行なんかできそうにないし、身近にも詳しい人はなく、きっと一生縁のないところかもしれないとうっすら思っていたものでした。
ところがパリの学校で仲良くなったおいちゃんは、クストリッツァと同じセルビア出身(現フランス人)だったのです。日本からフランスに来ただけなのに意外にもあっさりと貴重な人に出会ってしまいました。
現在パリには1万人強の旧ユーゴスラビア国民が移り住んでいると言われています。
その中で私は、日本では可能性は限りなくゼロに近かった「旧ユーゴの友達」ができたということはとっても幸運なことだし(ワーホリに来て良かった!)、さらに知り合った瞬間から今後の人生に何かしらの影響を与えてくれるだろうと感じていました。
彼はよく「Je suis serbe,tu connais?」(僕はセルブだけど、知ってる?)と自己紹介をしていて、もちろん私は知っていましたが意外と知らなかった人もいて、更に「ex-yougoslave」(旧ユーゴね)と言って笑わせるというのが通例でした。
またある授業で「あなたは何を失くしましたか」という質問に対し(普通は鍵やら財布やらと答えるところを)彼は「J’ai perdu mon pays」(自分の国を失くした)と答えながら我ウケしていて、周囲はブラック過ぎてちょっと笑えない雰囲気だったのが印象的です。人を楽しませるのが大好きなとっても陽気なおいちゃん(映画の中と一緒だ)です。
ある時クストリッツァの話題を私の方から持ち出してみたら、水を得た魚のように飛びついてきて映画に関する色んな話を聞かせてくれました。話の中でクストリッツァは山を一つ購入してそこに村を建てたということを知りました。
そこで彼の映画をやりたい放題に撮影していて、今回の「Promets-Moi プロメモワ」がその最初の作品だということです。
あまりに好きすぎて私には冷静に分析できませんが(;;)、とにかく若いカップルの純愛とギャングオヤジたちの悪巧みが話をややこしくするけど最後は結局ぐっちゃぐちゃのどんちゃん騒ぎという毎度おんなじ展開です(どんな映画だ)。
話はともかく、前作「Life is Miracle ライフイズミラクル」に引き続き馬鹿げた発明品が大活躍という設定が大好きです。「ウォレスとグルミット」に出てくるような目覚まし装置も登場して、いちいち細かいところが面白い。最後は自動墓場装置でさようなら、お見事!
役者陣はいつもの悪巧みをするオヤジ(Miki Manojlovic クスト映画には欠かせない男)に混ざって美しい新人女優(Marija Petronijevic)がとくに輝いていました。少年(Uros Milovanovic)も新人で、惚れっぽくて情熱的なセルブ男のいい味が出ててめっちゃ可愛い。
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そして今回最も注目すべきはセルビア国の成長ぶりです。本作は舞台が山と街に分かれており、山から出てきた少年が美少女と出会う街は「え、これがセルビア?」と思ってしまうほど、まさに都会。ずっとどこかに引きずっていた旧ユーゴのイメージは払拭されました。
近代的に自由になっているセルビアを垣間見ることができてどこかホッとしたような感慨深さがあります。
婚約者を見つけた少年が村に帰ってくると、クライマックスにギャングオヤジ達との戦争が始まります。
クストリッツァの真骨頂はやはりラストにあって、ただ幸せになることはできず誰かを蹴落として勝利したものだけが幸福を得られるというところ。
自分が幸せになることに必死だから、逆の立場の人間は完全に悪として描かれる。でもお茶目だからまたすぐに復活するのだろうけど(一応抹殺したことになっている)。
そして一番最後に「HappyEnd」(英語なのが嘘っぽさを強調して笑える)の文字が出てきて、直ぐさま「ホントかよ~」という突っ込みを頭の中で入れてしまいました。
この戦争が終わりそうで終わらないのではないかと思わせられるところが、クストリッツァ映画の面白いところです。
ちなみに書きながら「UnderGround アンダーグラウンド」のサントラを聴いていたんですが、あの頃の映画と比べると大分明るくなったんだなぁと実感できます。今回は音楽もいつもの民族音楽が進化してユニバーサルな感じでとってもサンパ(良い感じ)でした!
この映画を見終わった後も色々考えさせられましたが、夢のような話だったセルビア訪問も陽気なセルブおいちゃんのおかげで少し身近になったような気がしました。
観光客も訪れているというその「クスト村」には一度は必ず行かなければという思いを更に強く抱いたのでした。
■原題 : 「Zavet」
■2007年 セルビア・フランス 2h 6min
■監督: Emir Kusturica エミール・クストリッツァ
■出演: Marija Petronijevic, Uros Milovanovic, Miki Manojlovic, Ljiljana Blagojevic
こんにちは、S研のkoizumiです。
先日、メールも差し上げたんですが、5月にパリに行くことになりそうです!
一週間くらい滞在したいので、アパルトマンに泊まろうかという感じです。
こちらのBlog参考にさせてもらいますね!
日記と関係のない投稿ですみません。
こんにちは。Life is Miracleは私も大好きな映画です。普段あまりジェネリックを気にしないで映画を見るので知らなかったのですが、クストリッツァ監督という人の作品だったんですね。日記を読んで他の作品もぜひ見てみたいと思いました。
旧ユーゴといえば学生のときクロアチアで国際交流行事に参加したことがあります。国旗やナショナルチームのユニフォームをデザインした人による「いかにクロアチア人としてのアイデンティティを作っていくか」、という内容に基調講演に複雑な気持ちを抱いたのを覚えています。
Yukiさん、毎度コメント有り難うございます。
とっても貴重な経験ですね。
日本と違って子供のころからそれぞれの民族ナショナリズムを徹底的にたたき込まれるでしょうから、セルビアとクロアチアはやっぱり今も少なからず敵対関係にあるんだと思います。
ここしばらくフランスではコソボの話題で盛り上がってましたが、先日ようやく独立してまたさらに大騒ぎでした。