先日市内2カ所の大型映画館で行われたバンコク映画祭に行ってきました。オープニングはヘルツォーク×ニコラス・ケイジの「Bad Lieutenant: port pf call new orleans」でしたが、インヴィテオンリーで観られなかったので一般公開で、これは後ほど。
★マノエル・デ・オリヴェイラ「Eccentricities of a blond hair girl」葡・西・仏
面白い。なにそのラスト!って思わず口にしてしまう、終わってから笑いが込み上げてくる作品です。63分という極めて短い映画ですが、余すところ無くオリヴェイラ。凄いオシャレだし、凄い情熱だし、凄いシニカルで、凄い悲壮感。巨匠のこれくらいの中短編を観られるとすごく贅沢をした気分になります。「Belle toujours」以来日本公開が少ないのが残念ですが、観られたらラッキーですね。
★エリア・スレイマン「The time that remains(Le temps q’il reste)」パ・仏
パレスチナに住む家族を描く、母親から送られた手紙を元に監督の父親の話と、自身の記憶を織り交ぜて作られた寓話。
父親は鉄砲を作る鍛冶職人で、政府から常に狙われているが、幾度となく捕まってはそのたびに無事に家に帰ってくる。内戦は次第に平定され、新しい時代がやってくる。あんなにみんな大嫌いだったアメリカの、映画や歌が、今では若者たちに浸透していて、不思議な気持ちで見守ってきた少年も今や中年おじさん(この人がどうしても市村正親にしか見えない)。
驚きと笑いと少しの皮肉を混ぜながら時代が移り変わり、その構成が実によくできている作品。中東映画はいつもなぜか心を惹かれて観てしまうけど、こんなに万人に勧められると思った娯楽作品は今までなかったように思います。
観た後に調べていたら「D.I」の監督だったことを知りました。個人的に凄く思い出深い映画だったので、やっぱりこの人面白い、と1人で納得しました。
(※フランスで流された予告。これだけで既に面白い)
★マルコ・ベロッキオ「Vincere」伊・仏
イタリアが誇る巨匠の描くムッソリーニの知られざる秘密。そのふれこみだけで十分気になる映画。20世紀初頭のミラノと、女性(収容)修道院の二つの場面が、戦争が激しくなっていくにつれて対照的に描かれていきます。
女性が権力と戦うときに魔女的な扱いを受けて虐げられるという展開は、歴史的によくあることだとわかります。つい半年くらい前に観たイーストウッドの「チェンジリング」もそんな話でした。内容的にはあらすじ云々よりも、イタリア映画らしい重厚なセリフと、オマージュ的映像のモンタージュ、行進曲とともに存在感を出す白字幕が最高に格好いい映画です。
★ペドロ・コスタ「Ne change rien」葡・仏
モノクロで綴るとあるバンドのレコーディング風景。それだけです。凄く盛り上がるわけでも、ドキドキするわけでもないのに、なぜか目が離せない100分。白黒はっきりした映像だけをまぶたに焼き付けさせて、けだるいフランス語の朗読ともつぶやきともとれる歌が脳に浸透してしばらく忘れられなくなります。
しかしながらこれはどこかでゴダールの「ONE PLUS ONE」と比べては、ミックジャガーの迫力のせいだろうか、あの凄まじさには叶わないと思ってしまう。シャンソンのべたべたしたけだるさは好きな方なんですが、ちょっと長かった。
★ペドロ・アルモドバル×ペネロペ・クルス「Broken Embraces(Los abrazos rotos)」西
平日の上映だというのに満席+通路席まで出るという異様な事態。それだけ今回一番の注目度でしたが、それを1ミリも裏切らない出来に、エンドロールで会場から自然と拍手が沸き起こりました。
これまでの作品とはちょっと違ったミステリーテイストの作品でしたが、最後はやっぱり母親が秘密を握ったまま幕を閉じるいうところが、女性回帰的でこれぞアルモドバルという感じでした。
ペネロペはもう息を呑むほどの美しさで、歳はとってるはずなのに、昨年のウディ・アレン作品とはまた全然違った、圧倒的な絶世の美女を描き出している力に感嘆です。
構成やトリックなどいろいろ書きたいのですが、内容は一部英語字幕が早すぎて理解が及ばなかったので、誤った解釈を恐れて、もう一度日本で観てから考えたいと思います。
●キアロスタミ監督の新作も気になりつつスルーしてしまったので、いつかどこかで観られればいいなと思っています。日本映画では橋口亮輔監督の「ぐるりのこと」が出品されていました。全体として様々なジャンルが一同に観られてとても充実した映画祭だったと思います。
●バンコク映画祭にはこのほかに東南アジアコンペ部門があり、フィリピンの「AURORA」というビデオ作品を見たのですが、画面のちらつきが気になったのと、背景知識不足で十分に理解することが出来なかったので、感想は割愛します。